納棺師のメイクのすすめ
納棺師は、死化粧や、湯灌、納棺を行い、大切な方の旅立ちの姿をきれいに整える仕事です。
映画おくりびとで、普段は葬儀に関わらない方にも知られるようになった納棺師の実際とプロに依頼するメリットについて解説します。
納棺師に依頼するメリット
納棺師には、葬儀会社に所属している場合と、専門的に死化粧と遺体処理を行う会社に所属している場合があります。
死化粧に関して、納棺師はご遺体を学び、専門的な知識を持っています。
ご遺体の状況はそれぞれ違っていますから、一人ひとりに合わせたお化粧が必要です。
特に長い闘病の後などは元気な頃と顔が変わってしまっている場合も多いです。
ご遺族からの要望としては、病気による顔のやつれだけをなくしたい場合や女性ですと、きれいにきちんとしたい場合もあり、さまざまです。
義歯をなくしてしまった場合にも、かわりになる遺体用の義歯を用意できる場合もあります。
含み綿も適切に入れることで、お顔の様子はよりよくなります。
ご事情のあるご遺体の修復も、限度はありますがノウハウを持っている納棺師がいます。
傷跡やあざを目立たなくする方法もあります。
納棺師は、ご遺族の希望と、故人の意向があればそれを擦り合わせ、ご遺体の現状とあわせ、最もよい手段を決めています。
残された故人の写真を参考にすることもあります。
要望をつたえ、プロにまかせることで、最後に満足の行く姿で送り出せれば、残された方にとってもよいお別れの記憶が残ります。
あとでよく思い返すのは、最後に見た故人の姿、ということは多いです。
ご遺族だけではなく、会葬者の方にとっても、故人の最後の姿が穏やかできれいなものであれば、しのぶときに心が休まります。
湯灌の儀式や納棺の儀式も含め、納棺師の提供するサービスは、グリーフケアの観点からも、単なる遺体の処置以上のメリットがあります。
エンバーミングとは
こちらもドラマで有名になりましたが、エンバーミングと言う言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
エンバーミングは西洋の土葬文化をベースにした技術です。
日本では短期間のうちに火葬にしますから、なじみが薄いものでした。
ですが、技術を習得したエンバーマーは、国内でも増えていますし、エンバーミングも扱っている葬儀社もあります。
エンバーミングでは、修復とともに防腐をよりしっかり行います。
海外で亡くなった方の遺族が現地に到着するまで遺体を保存しておきたい場合、海外へ遺体を搬送して葬儀をしたい場合など、特に葬儀の日程を遅らせたい理由がある場合には、費用はかかりますが検討の余地があります。
納棺の実際
葬儀のオプションで、納棺、湯灌を儀式として取り入れている葬儀会社もあります。
具体的には何が行われるのかについて、一般的な例をご説明しましょう。
湯灌と言う習慣は、仏教のものですが、キリスト教、神道でも、希望すれば同等のことを行ってくれる葬儀会社は多いです。
時期的には、ご遺体が自宅または斎場に運び込まれてから、早い段階で行われます。
葬儀まで何日かある場合は、その待ち時間の間で、亡くなられてから2日以内が目安です。
自宅に遺体が安置されている場合もあり、斎場で安置室から、専用の小部屋に遺体を移動して行うこともあります。
自宅で布団に寝かせていなければいけないというわけではないので、希望すれば斎場でも儀式はできます。
ご自宅であれば湯灌用の特殊車両を持っている葬儀会社もあります。
納棺すれば、お顔を見ることはできますが、ご遺体に触れなくなります。
ご遺体と触れ合える最後の機会です。
もし、遺髪が欲しい場合はこの機会がいいでしょう。
着せたい衣服がある場合は、最初の葬儀の相談の段階かなるべく早くに、葬儀担当者に相談しましょう。
納棺の手順
基本的には、2名の納棺師がご遺体を扱います。
まずは浴槽を用意します。
その後、遺体を整えます。
遺体は硬直していますから、その硬直をほぐします。
湯灌をする場合は、バスタオルをかけて衣服を脱がせます。
浴槽は細長く、担架のようにささえがあり、ご遺体がのるようになっています。
適宜、ボディーシャンプーやシャンプーを用います。
ご遺体を移動したら、納棺師から口上があり儀式に入ります。
ご遺族が参加する場合、ご遺体を覆ったタオルの上から、お清めの水をひしゃくでかけていきます。
葬式に関わることは逆順という風習に従い、足元からはじめ、胸元へかけていきます。
ひととおり、ご遺族のお清めが済みましたら、納棺師がシャワーを使い、適切に洗い清めます。
お顔もきれいに洗います。
病後でひげが伸びていた場合は、シェービングフォームを使い、ひげそりをします。
爪がのびてしまっている場合も爪を整えます。
鼻などに綿をつめる手順もここで行われます。
このあたりは、ご遺体の状態により、病院での処置がされている場合もあります。
ご自宅で、水が使えない場合も、ドライシャンプーや清拭で、ご遺体の状態を整えます。
その後、白装束か、故人の好きだった衣装に着替えていただき、髪の毛のセットや、お化粧をします。
病後でやつれていたご遺体も、プロの手によるメイクで、見違えるようにきれいになる場合が多いです。
専用のメイク用品を使い、できるかぎり、生前の自然な表情を取り戻すようにします。
お元気だった頃の姿に近いお別れができる点で、納棺師に依頼するのは、検討の価値がある方法です。
その後、ご遺体を丁寧に棺におさめ、姿勢を整え、布団をかけます。
式まで棺に入れておきたいものがあれば、この機会に相談するのが妥当でしょう。
腐ったり悪くなるものは入れられませんが、斎場安置でひとりの時間をすごす大切な方に、なにか持たせたい、と言う気持ちはもっともです。
末期の水に関しては、病院での看取りで行われる場合と、納棺のときに行われる場合とあります。
病院のエンゼルケアと、葬儀社のケア
ご遺体になった後は、生前とは違う身体状況になります。
時間経過に伴い死体現象が起こります。
ご遺体を家族以外が扱うことに抵抗を示す方もいますが、知識がない場合は手に余ることが多いです。
専門家にまかせることで、最期のお別れまでいい状態で、故人様との思い出を残せますし、故人の尊厳も保たれます。
亡くなってから初期の手当ては、死後2時間くらいまでに行われるのが適切です。
これには、ご遺体に関わる人々への、感染防止や公衆衛生のためにも重要です。
もっとも基本的な手当ては、死後すぐに病院の看護師により行われます。
エンゼルケアという呼び名で、医療側でノウハウが蓄積されています。
ですが、現状では、よしあしがあり、ご遺体が病院を出て、自宅や斎場に搬送された後に問題がおこる場合も、ままあります。
葬儀社の選び方
よい葬儀社であれば、不測の事態に対応できる技術やノウハウもあります。
全体的なサービスのレベルが高い葬儀社を選ぶメリットは、こういうところにもあるのです。
病院を出た後のケアは、葬儀社のスタッフや、社内に所属している納棺師、派遣される納棺師が、ご遺体の保全に当たります。
日に日に変わっていくご遺体の状態に合わせて、きめこまかく対応するノウハウを持っているところがいいでしょう。
すでにご遺体になってしまわれた故人の体のケアももっともですが、ご遺族に対する配慮も、納棺師の仕事のうちです。
遺族側からの故人に対して、亡くなってもきれいでいて欲しいと願う気持ちを実現するのが、納棺師といえます。
ご遺体のケアについては、施設が整っている斎場のほうが、コンディションは保ちやすいです。
もし、ご自宅での安置で困ったことが起きた場合は、葬儀社に連絡して対処を求めるのがいいでしょう。
搬送されてすぐであれば、病院に問い合わせると追加の処置をしてくれる場合もあります。
看護師のエンゼルケアと、葬儀会社のケアでは、持っている資格が違いますので、若干の違いがあります。
葬儀社の関係者は病名などは通知されません。
ですので、基本的には感染の可能性があるものとして、ご遺体を扱います。
いわゆる病原菌以外にも、ご遺体に触れるのは一定のリスクがあります。
ご遺族がご遺体に触れる場合も事情は同じです。
特に自宅安置を希望する場合、葬儀社の見積もりのときに、どのように処置するか質問するのは、よい葬儀会社を見分ける方法です。
きちんと対策をしているところは、ご遺族への配慮も行き届いていると推測できます。
この記事を書いた人
木南 健(きなみ たけし)
後悔を残さない最期を
数年前に父が急死した際、今の仕事に就いていればどれだけ母や兄妹の支えになれたのだろうと考えることがあります。
過去は変えることはできません。
あの日、抱いた悲しみや不安の根底にあったものは父をしっかり送ってあげたいという想いです。
同じように、大切な人との別れによる「悲しみ」「不安」を抱く方々の支えとなり、その根底にある「大切な想い」を形にするお手伝いができればと思っています。
心に残ったこと
まだ駆け出しの新人だったころ、お葬式が終わった後、喪主様に笑顔で力強く握手をされたことです。
期待にお応えできたんだと言葉以上に感じることができ、とても嬉しかったです。
出身:岡山県岡山市
趣味:弓道、読書
好きな映画:「サトラレ」
好きな音楽:BEGIN