【東京葬儀】「ちょうどいい家族葬」専門店

「葬儀屋さんじゃないふりをして!」から始まった一日葬

「葬儀屋さんじゃないふりをしてくれませんか?」

そんな言葉から始まったあるお葬式の話しを書きます。

ある秋の夜、21時頃に鳴った電話に出ると、コソコソと話すご年配の女性・梶原芳美さんでした。

旦那様の義春さんは、自宅療養中でお医者様から「今週がヤマです」と言われている状況でした。

本来であれば入院していなければいけないのですが、頑固者の義春さんは「俺が一から作った家で最期を迎える」の一点張りで入院はしませんでした。

万が一のことを考えるにも近くに義春さんがいるので芳美さんは「葬儀屋さんじゃないふりをして欲しい」と電話をしてきました。

頑固おやじは自分の葬儀も勝手に決めちゃう

それから約2週間後、義春さんは息を引き取りました。

事前に相談していたこともあって、ご連絡をいただいたとき芳美さんは落ち着いた様子でした。

ご自宅で義春さんのお顔を整えたり、ドライアイスをあてたりと処置が終わり、お葬式の打合せが始まりました。

「どんなお葬式にしたいですか?」の質問に芳美さんの第一声は「あの人が火葬だけでいいと言っていたので…」と答えました。

浮かない顔をする芳美さんは続けて「あの人…頑固だったから」と言いました。

旦那と違う妻の想い

翌日、ドライアイスの交換に伺うと芳美さんは遺影写真に使う写真を持ってきてくれました。

北海道旅行の写真で大きなカニ料理を前にした2ショットに思わず「美味しそう!」と私が言うと「私がテレビ見ててカニ美味しそうって言ったら次の週末に連れていってくれたんです。
この写真もね…」といろんな場所の旅行写真を見せてもらいました。

「あの人はいつも私のことを優先してくれました」という芳美さんに「もしかしたら義春さんが頑固に火葬式を望んだのも芳美さんの今後を想ってのことかもしれませんね」と言うと「私もそう思います。だから最後はあの人に反抗しちゃおうかなと思って」と芳美さんはいたずらな笑顔を浮かべました。

2人の中間策「一日葬」

義春さんが希望した「火葬式」そんな義春さんの仲間を呼んでしっかりとお別れをしてあげたいと思う芳美さん。

迷っていた芳美さんに提案したのは「一日葬」でした。

「一日葬」とはお通夜を行なわず、火葬と同日に告別式を行う従来の形式にとらわれないお葬式です。

妻の負担を考え、頑固に「火葬式を希望」した義春さんの想い、それでも最後はしっかりとお別れをしてあげたいという妻の想い、どちらも叶えることができると芳美さんは大変喜んでくれました。
「火葬式という旦那の希望は通さないけど一日葬なら許してくれるわよね」

どうせお通夜をやらないなら飲み会を

芳美さんは「火葬だけじゃなくて、一日葬をやるので皆さん来てくださいと仲間に伝えると『ちゃんとお別れの場をくれてありがとう』と言われました」と安心したように話してくれました。

しかし続けて『お通夜がないのは初めてだから、告別式前日の夜に仲間で集まり、義春さんを偲んで一杯飲むことにしたよ』と言われたことを気にしていました。

お通夜がない「一日葬」

それでも式場の準備は前日からやらないといけないため祭壇の飾りや義春さんのご安置をします。

そこで私はこんな提案をしました。

「告別式前日(お通夜にあたる日)は、式場準備が17時には終わるので、皆さん式場に集まって一杯やるのはいかがですか?」

芳美さんは目を真ん丸にして喜んでくれました。

会話が生まれる式場

私は芳美さんに提案し、想い出コーナーを作成しました。

芳美さんとの旅行写真やご友人とのハイキングの写真などをコルクボードに貼り、愛用していた釣竿を展示し、中でも自慢の魚拓を額縁に入れて飾りました。

告別式前日、義春さんを偲ぶために集まったご友人の方々。

写真を見ては「この写真撮ったあとにハルさんお弁当ひっくり返したんだよ」「これどこ行ったときだっけ?」そして魚拓を見れば「釣りはハルさんには勝てなかったなぁ」「これ釣ったとき俺が網ですくってやったんだよ」と芳美さんも初めて聞く話が次から次へと出てきました。

「仲間でワイワイ」の翌日は厳粛なお葬式

翌日、告別式ではお坊さんに読経をしていただき、焼香、お花入れ、出棺、火葬といわゆる一般的なお葬式のカタチでしっかりと見送ることができました。

「なんだか2種類のお葬式ができたみたい」とご親戚の方が言っていたのが印象的でした。

これで一日葬は無事に終わり、骨壺を抱えてご自宅へ帰られました。

旦那様を亡くした或るおばあちゃんにかけた言葉

芳美さん宅で後飾り(自宅で骨壺を安置するための一時的な祭壇)を組み立てていると、後ろにいた芳美さんが「一日葬でこんな色々できると思いませんでした」と言いました。

私は「義春さんも喜んでいると思います」と言うと「そうね、本当は喜んでるくせに『俺は火葬だけでいいって言っただろ』って言いそうだけど」と微笑みました。

帰り際「私のときも一日葬で米田さんにお願いするわ」と言っていただきました。

私は「承知しました。じゃあ50年後に予約入れておきます」と言うと、芳美さんはくすくすと笑って「そうね」と言いました。

この記事を書いた人

木南 健(きなみ たけし)

後悔を残さない最期を

数年前に父が急死した際、今の仕事に就いていればどれだけ母や兄妹の支えになれたのだろうと考えることがあります。
過去は変えることはできません。

あの日、抱いた悲しみや不安の根底にあったものは父をしっかり送ってあげたいという想いです。

同じように、大切な人との別れによる「悲しみ」「不安」を抱く方々の支えとなり、その根底にある「大切な想い」を形にするお手伝いができればと思っています。

心に残ったこと

まだ駆け出しの新人だったころ、お葬式が終わった後、喪主様に笑顔で力強く握手をされたことです。

期待にお応えできたんだと言葉以上に感じることができ、とても嬉しかったです。

出身:岡山県岡山市

趣味:弓道、読書

好きな映画:「サトラレ」

好きな音楽:BEGIN