家族葬について①:家族葬とは
「家族葬」は、近親者だけで行う小規模の葬儀のやりかたです。
核家族化のすすむ現代では、旧来の方法よりも事情にあう場合も多く注目され、葬儀社の提案するプランも多いです。
この項では「家族葬はどういうものか」と、メリット、デメリットの概略をご紹介します。
家族葬とは
「家族葬」と言う言葉やプランを、葬儀社などのホームページで見かけることが多くなりました。
冠婚葬祭の儀式も、時代によって変わっていきます。
旧来の慣例にとらわれない方法も、時代の要請により行われるようになりました。
「家族葬」とは、「近親者だけで行う小規模な葬儀」のことです。
この言葉は伝統的な用語ではなく、1990年代ごろからの日本の実情にあわせた、新しいプランを提案するのにあわせ、葬儀社が作った言葉です。
現在では、各社で「近親者でおこなう小規模プラン」の名称として使われています。
「家庭葬」と呼ばれることもありますが、旧来の「故人の居住地であった住居で行う葬儀」とは、定義が違います。
「どのくらい故人に近い方まで参列していただくか」を限定し、小規模で行う葬儀が「家族葬」です。
「場所」ではなく「規模」による分類ですので、「家族葬」を「故人の住まい」で行うことはありえます。
「家族葬」は斎場でも自宅でも行えます。
「家族葬」の形と、宗旨や宗派は関係がありません。無宗教の場合も同様です。
お別れのかたちも、各社でさまざまなプランを提案しています。
故人の信仰していた宗教があればその宗教の様式で行えます。
無宗教式の場合は「自由葬」と言うくくりで呼ばれることもあります。
プランを見るときに、「家族葬」と呼ばれるものは、「あくまでも少人数のプラン」であることを念頭に入れておくと理解しやすいでしょう。
参列者は家族のみなど数人から、多くても50人までです。
それ以上であれば、別のプランを選ぶのが妥当です。
密葬と家族葬の違い
旧来から言われている「密葬」との違いがわかりにくい、と思われる方も多いです。
「密葬」は「家族葬」とはことなるものです。
「密葬」の場合は、社会的な告知とお別れの機会を「本葬」として別途で行うことが前提であり、「密葬」のみですますことはありません。
著名人の「お別れの会」なども「密葬」に対しての「本葬」と同じ役割を果たします。
「家族葬」の場合は、社会的なお別れの機会も担います。
規模の大小はありますが、密葬の場合の「本葬」と同様の位置づけになります。
この規模の大小がお葬式のよしあしを決めるものではありません。
故人やご遺族が、故人とどのくらい関係が近かった方まで葬儀に立ち会って欲しいかにより、最適な規模を選べばいいのです。
「家族葬」に招かなかった社会的なつながりがある方々には、あとで書面などでおしらせするのが一般的です。
また、「近親者」の範囲は、家族だけに限定されません。
決まりはありませんので、連絡に十分な配慮をすれば、立場を問わず招いて構いません。
本当にお見送りをしていただきたい方に参列してもらえる規模のプランとして、検討の価値は高いです。
どこまでを「家族葬」と考えるかは、葬儀社によって見解が分かれますので、見積もり検討時によく相談するのがいいでしょう。
家族葬のメリット
現代の事情にあった「家族葬」のメリットは、第一に無駄がないことです。
伝統的な葬儀の様式も、そのご家庭に合っていれば有用性もありますし、伝統にそった手順を踏んだお別れを望む方も多くいらっしゃいます。
ですが、伝統的な方法は多くの家庭にとって、時間的、地理的、経済的な事情に合うとはいえなくなっています。
予算を自由に利用できる
「必要のあるものにだけお金を使いたい」と考える場合、「家族葬」はよい選択肢のひとつです。
「家族葬」には決まった形がありませんので、宗教様式にのっとりつつ、(生前予約をしている場合)故人や、ご遺族にとって重要でない手順を省けます。
より時間や費用をかけたいところに同じ予算を割り振ることもできます。無宗教であれば、そのあたりの事情はより自由になります。
総体としての予算については、「家族葬イコール安い葬儀ではない」ことは、気にとめておく必要があります。
少人数を招いた小規模の葬儀でも、祭壇、会食などに費用をもりこみ、より希望に沿った葬儀にする場合もあります。
その場合、総額は中規模の一般葬と変わらない場合も出てきます。
予算が限られている場合に、式次第、オプション、祭壇など、限られた中で満足の行くものを選びやすいのも家族葬です。
ですが、総額の計算はお香典で入る額と出て行く額をあわせて考える必要があります。プランによって、リーズナブルになる場合とならない場合があります。
「ここはこだわってあげたい」と言う部分にちからをそそぎ、他はほどほどで押さえれば、限られた予算でも満足度が高い葬儀にしやすいのは、「家族葬」のメリットです。
参列人数が変動しないので、飲食や返礼品など「流動費」の幅を見込まなくて良く、予想外の予算がかかりにくいこともメリットと言えましょう。
少人数でゆったり見送れる
「家族葬」では「少人数であること」で、ご遺族や親しい方が気兼ねなくお別れができます。
故人がなくなられて悲しみにしずむなか、大規模な葬儀の主催者となるのは、大変なことではあります。
弔問者の対応に神経をとられ、正直もう少しゆっくりと、故人とのお別れをしたかったという場合もあるでしょう。
家族と近親者だけの葬儀では、弔問に時間を取られず、アットホームにお別れができるという点で、選ぶメリットは多く、検討してみる余地は大きいです。
闘病の後のお別れなど、ご遺族が消耗なさっているばあいも、密葬または家族葬はメリットが大きい方法です。
葬儀社が「家族葬」として提案するプランは、従来からある形式ばった儀式よりも、ご遺族や近親者の気持ちを重視する傾向です。
あいさつの順番や、席の順、会場レイアウトなど、とらわれずにご遺族の意向できめられる場合が多いです。
良くわからない場合も、葬儀社の担当者に、こんなイメージのことがしたい、と相談するといいでしょう。
家族葬のデメリット
メリットが多い「家族葬」ですが、そのメリットを十分に生かし、よいお別れにするためには注意すべき点を知る必要があります。
親族への連絡について
まずは、親族の方と十分な相談をする必要があるということです。
「家族葬」は新しい葬儀のスタイルですから、年配の方の中には、参列者をたくさん招いた伝統的なお見送りが好ましい、と考える方も多くいらっしゃいます。
どちらが優れているということではありませんので、故人にもっとも近いご遺族の事情に沿ったものが、よい方法と言えましょう。
ですが、ご親族の方との間に遺恨を残されますと、あとの供養にさわることもありますので、十分な相談をするに越したことはありません。
「近親者」について、どの範囲まで招くかを、身内でよく相談するのも重要です。
一般的な家族葬では、親族までのことが多いです。葬儀社によって家族以外を呼ぶ場合、家族葬以外のプランをお勧めする場合もあります。
特に世話になった方、恩師、職場の方などを数人だけ招きたい場合、ご連絡の仕方には配慮が必要です。
「家族葬」のあと、一般的な「本葬」にお呼びする範囲の方には、通知書面でお知らせすることになります。
多くの場合、職場、学校など故人の主たる活動範囲にはすぐ伝える必要がありますが、「家族葬」であることを、しっかりと伝える必要があります。
これまで故人がお世話になったお礼とともに、会葬を希望しないこと、弔花、弔電、香典を辞退する場合はそれも誤解のないように伝えましょう。
大切な方が亡くなられた大変なときですので、まずは直属の上司など、もっとも故人が関わりの深かった方にお伝えすればいいでしょう。
それ以外への通知は、葬儀が終わった後になっても失礼には当たりません。
趣味のご友人など、プライベートで親しくしていた方に連絡をするのは、家族葬にすることがきまり、葬儀後の段取りを考えてからにするといいです。
お別れ会などを考えている場合は、それも同時に通知できるとベターです。
段取りが決まるまでにすこし時間がかかる場合も、そのほうがいいでしょう。
特に呼びたい方がいる場合は、「少人数での家族葬」であることとともに、うちうちで別個に知らせます。
弔問者への対応
「家族葬」で意外と問題になるのは、「後々の弔問者の対応」です。
故人とつながりのあった方が弔問を希望されることはよくあります。
一般的な「本葬」は弔問は葬儀のときに集中します。
「家族葬」の場合、後での別個の弔問対応や、返礼品の用意に意外に手間が必要だったと言う声もあります。
この点は、デメリットとまではいえませんが、「家族葬」を考える際に、十分に注意するべき重要なポイントです。
連絡を回す前に、後で故人の逝去を知った方も含め、後日の対応を考えて置きましょう。
ご遺族の方に無理ないプランを考え、お断りする方法もあります。
この記事を書いた人
木南 健(きなみ たけし)
後悔を残さない最期を
数年前に父が急死した際、今の仕事に就いていればどれだけ母や兄妹の支えになれたのだろうと考えることがあります。
過去は変えることはできません。
あの日、抱いた悲しみや不安の根底にあったものは父をしっかり送ってあげたいという想いです。
同じように、大切な人との別れによる「悲しみ」「不安」を抱く方々の支えとなり、その根底にある「大切な想い」を形にするお手伝いができればと思っています。
心に残ったこと
まだ駆け出しの新人だったころ、お葬式が終わった後、喪主様に笑顔で力強く握手をされたことです。
期待にお応えできたんだと言葉以上に感じることができ、とても嬉しかったです。
出身:岡山県岡山市
趣味:弓道、読書
好きな映画:「サトラレ」
好きな音楽:BEGIN